株式会社アクトブレイク

2026-07-22

同じ杉の柱が、なぜ3通りの名前で届くのか

木材・建材の卸で受注を担当している方なら、一度は経験があるはずです。

同じ「杉の3.5寸角・KD材」の注文なのに、得意先によって書き方がまったく違う。ある会社は「杉KD105」、別の会社は「スギ三・五寸角」、また別の会社は「S105」とだけ書いてくる。しかも、その多くが手書きのFAXで届きます。

受注担当の頭の中では、これらが瞬時に「ああ、あの材だ」と一つに結びつきます。長年やってきた人ほど、迷いません。けれど、この「頭の中での読み替え」こそが、実は会社にとって見えないリスクになっています。

なぜ木材はこれほど表記が揺れるのか

工業製品の多くは、型番が一意に決まっています。同じ商品なら、どの取引先も同じ品番で発注してきます。

ところが木材・建材はそうなっていません。樹種(杉・桧・米松)、寸法(3.5寸角・105角)、等級、乾燥(KD・グリーン材)といった属性の組み合わせで一つの商品が決まり、その表し方が業界内で統一されていないのです。寸法ひとつ取っても「3.5寸」と「105ミリ」は同じものを指しますが、書き手によってどちらで書くかが変わります。

さらに、発注する側の工務店や建設会社も、それぞれの社内ルールや、担当者個人の書き癖で注文書を書きます。結果として、卸の受注担当のもとには、同じ商品を指す何通りもの表記が日々流れ込むことになります。

「読み替え」が生む3つの見えない損失

熟練の担当者が頭の中で正しく読み替えているうちは、表面上は何も問題が起きていないように見えます。しかし、その裏で3つの損失が静かに積み上がっています。

1つ目は、データが正しく紐づかないことです。 表記が揺れたまま基幹システムに入力されると、同じ商品なのに、システム上では別々の記録として扱われてしまいます。マスタの正式な品番を選ばず、FAXに書いてあった表記(「杉KD105」「S105」など)をそのまま自由入力してしまうケースや、正しいマスタが見つからず「その他」コードにまとめて処理してしまうケース、あるいは新しく別の商品コードを作ってしまうケースなど、起き方はさまざまです(中小企業では権限管理が緩く、担当者がその場で新規登録できてしまう会社も少なくありません)。起き方は違っても、結果は同じです。在庫の実数も、どの商品がよく売れているかという分析も、少しずつ実態とずれていきます。経営判断のもとになる数字が、静かに濁っていくのです。

2つ目は、入力そのものに時間が奪われることです。 手書きのFAXを一枚ずつ読み解き、正しい品番に読み替えて打ち込む。この作業は、一件あたりは短くても、一日に何十枚と積み重なれば相当な時間になります。その時間は、本来もっと付加価値の高い仕事に使えたはずの時間です。

3つ目は、この判断が特定の人に依存してしまうことです。 「杉KD105」も「S105」も同じ材だと分かるのは、経験を積んだ担当者だからです。その人が休んだ日、代わりの人が同じ精度で読み替えられるでしょうか。表記揺れの読み替えは、マニュアル化しにくく、特定の人の頭の中に溜まっていきます。これは、静かに効いてくる経営リスクです。

「システムを入れれば解決する」わけではない

ここで誤解されがちなのが、「販売管理システムを導入すれば、この問題は片づく」という考えです。

実際には、多くの卸がすでに販売管理システムを使っています。それでも表記揺れの問題が残るのは、システムに"入力する手前"が人の手作業のままだからです。手書きのFAXを読み、それを正しい品番に読み替えて入力する——この一番面倒な工程は、システムを入れても人が担い続けています。

だから、本当に手をつけるべきなのは、システムそのものの入れ替えではありません。「受けた注文を、正しい品番に変換して入力する」という、その継ぎ目の部分です。ここを仕組みで支えられれば、担当者は読み替えの負担から解放され、データも正しく揃い、属人化も薄れていきます。

おわりに

表記揺れは、木材・建材卸にとって「当たり前すぎて、問題として意識すらされない」ことかもしれません。長年、熟練の担当者が頭の中でさばいてきたからです。

けれど、その"当たり前"を担っている人が一人だとしたら。その負担を、いつまでも個人の記憶と勘に頼り続けていいのか。一度立ち止まって考える価値はあると思います。

私は、この業界を一社ずつ電話で回り、現場の方に受注の実際を聞いてきました。テンプレートを持ち込むのではなく、御社の"面倒"に合わせて設計します。もし受注業務の詰まりに心当たりがあれば、まずは1分でわかる自動化余地の診断から試してみてください。

貴社の業務、まずは無料でお聞かせください

1分でAI診断を試す